BBSにてMk.46短魚雷を作って欲しいという変なリクエストがあったので、少し意地悪をしてみることにした。
作るだけ作ってそのものを公開しない、代わりに作り方を公開してみやう、という訳である。

   ハ,_,ハ     ハ,_,ハ 
 ,:' ´∀`';,:' ´∀`'; まさに外道モサリモサリ
 :: っ ,っ :: っ ,っ 
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なお当方はGepoly系に関してはサッパリなので、使い慣れたメタセコでの作り方を紹介する。
Metasequoiaは優れた機能と動作性を有し、かつ初心者でも容易に習熟可能な操作性を有する3Dモデリングツールである。
当方は課金したシェアウェア版を使っているが、フリー版のLEでもYSF用モデルを作るには十分なほどの機能を持っている。

Mk.46
まず下準備と言うことで資料集め。
グーグル先生に「Mk.46 torpedo」とか入力すれば、この手の画像が出てくる。
足りなければキーワードの組み合わせを変えたり別のキーワードに変えたりしよう。
ちなみに日本語で「魚雷」と入れると、発射管かダミー弾体しか出てこない。

さて適当な投影図が見つかったのでメタセコに下絵として読み込んでみる。
なおメタセコはgifを読めないのでpngかjpgにでも変換しておこう。
Mk.46
すごく・・・大きいです・・・
当たり前だが画像の縮尺が正確であるという保証は何処にもない。
(どころか図面として正確である保証も無いのだがそれは後述)
なので下絵を然るべきサイズに補正してやる必要がある。
Mk.46
とりあえず今回はメタセコ上で「基本図形」コマンドを使って補正を試みる。
Pを押すと作成メニューが表示されるので、立方体を選んで詳細設定ボタンを押す。
すると立方体のサイズを入力するボックスが出てくるので、Zのところに魚雷の全長をメートル単位で入力して作成ボタンを押す。
Mk.46
XとYは適当に縮小して色を半透明に設定してやる。
そして「下絵」コマンドを選択し、Shiftを押しながら下絵の端をドラッグ、作った立方体と魚雷の全長を一致させる。
これで下絵のサイズ補正は完了、本体を作る準備が整った。

まず基本となる胴体部分を円柱から作り出す。
Mk.46
「基本図形」コマンドから今度は円柱を選択し、サイズや分割数などを決める。
分割数は4の倍数にしておくと、後でフィンの位置決めなどでの面倒が少ない。
そもそもこの手の兵装のフィンは大抵4枚の十字配置、なので本体の分割数もそれに合せると言う訳だ。
ディティールとパフォーマンスの妥協点と言うことで、今回は8分割にしてみた。
Mk.46
作った円柱の位置を下絵に合せて、長さを適度に変えてやる。
当たり前だが魚雷にしてもミサイルにしても、先端や後部は単純な円柱形ではない。
この部分の作り方は色々あるであろうが、とりあえず一例として押し出しと拡縮を使った方法を紹介する。
Mk.46
まず先端部分を「押し出し」コマンドで少し押し出す。
Mk.46
そして「拡大」コマンドを使って押し出した面を等比変形させる。
選択面の中央にある黄色のボックスをドラッグすれば視覚的に操作できるのでお試しあれ。
適当なサイズに縮小したところで、「押し出し」コマンドで更に先端面を押し出して等比変形させる。
Mk.46
以上のことを4回か5回繰り返せば、先端形状は容易に完成する。
微調整をしたい時はF1を押して真横に視点を変えた上で、範囲選択で任意の頂点の並びだけを選択して移動や等比変形させれば良い。

余談だがごく一部の例外的な兵装だと断面が複雑に変化したり円断面ですらなかったりする。
例えばAGM-86は丸みを帯びた台形断面だが、これは爆撃機のロータリーランチャーに効率的に収納する為である。
AGM-154の場合は電波反射を抑える為に四角っぽい断面形状になってる。

Mk.46
後部も先端と同様に押し出しと縮小で作っていく。
Mk.46
これで本体形状は完成だ。

次にフィン(安定板)を作る。
Mk.46
今回は立方体を元に作る方法を採用。
まずX軸幅を適当に縮小して板っぽくする。
その上で下絵のフィンと4組の頂点位置をそれぞれ合せる。
Mk.46
するとこんな感じになる。

下絵と違うじゃないかと思うかもしれないが、これで正解である。
実は下絵にした画像のフィン形状が間違っていて、本物は後ろ付根に切り込みなんか無いのだ。
同様にスクリューの部分も下絵はかなり適当というかいい加減である。
この画像に限らず、世に出回ってる投影図には割りと不正確なものが多い。
いわゆる三面図と呼ばれるものですら、ディティールが正確である保証はないのだ。
模型屋さんはそういうことを知ってるので、新作開発の時は出来るだけ現物の写真を撮ろうと努力する。
場合によってはメーカーから製造図のような、「本物」の図面を提供して貰うことすらあるそうな。
そんな訳で投影図や三面図があるからと言って、実物の写真を観察しなくて良いと言うわけではないのだ。

とりあえずフィンの断面系をひし形に、つまり縁にエッジを立てて真ん中を膨らませてみたい。
と言う訳で「ナイフで面を切断」コマンドを使って真ん中のポリゴンをぶった切る。
Mk.46
このままだとただポリゴンを増やしただけ、なので縁の頂点をくっ付けてエッジを作る。
まず付けたい頂点を選択し、「選択部処理」から「選択頂点をくっつける」で一つの頂点に纏める。
Mk.46
フィンの左上の頂点が実際にくっ付けた後の頂点である。
この調子で4箇所とも纏める。
Mk.46
見事なひし形断面の完成である。

魚雷に限らず誘導弾などの安定板や制動板は、大抵この様なひし形断面である。
もっと単純なものの場合、ひし形ですらなく単なる板であったりもするが。
航空機の様ないわゆる翼断面の安定板は、大型巡航ミサイルなど極一部でしか使われていない。

ここで少し脇道に逸れてみる。
Mk.46
ここまでの作り方だと付根部分の下にもポリゴンが貼られる。
だがこのポリゴンは魚雷本体と重なって表示されない、つまり無駄なポリゴンである。
Mk.46
なのでバッサリと削除してしまうと良いだろう。
軽快動作を売りとするYSF用のモデルでは、こうした部分に気を回すのも重要である。

本道に戻って、フィンの枚数を増やす作業に取り掛かろう。
まず「選択部処理」から「面の鏡像作成」コマンドを使って、ZX面の鏡像を作る。
Mk.46
この時に魚雷本体の中心がZ軸と一致してないとフィンの位置がずれるので注意しよう。
後はこのフィンをオブジェクト管理窓の「複製」コマンドで複製し、「回転」コマンドで90度回転させるだけ。
Mk.46
管理窓上で複製したフィンを、複製元にドラッグして一つのオブジェクトに纏めて終わりである。

最後にスクリュー部の作成である。
Mk.46
スクリューは枚数が多いので平面状の板を両面化して整形していく。
Mk.46
色々と切った貼ったしてこんな感じにしていく。
ちなみに仕様コマンドは「ナイフで面を切断」「選択頂点をくっつける」「2つの三角形面を合成」ぐらいである。
そんでもって、このままじゃ全く推進力が生まれないので角度を変えてやる。
Mk.46
部分的に角度を変えて捻った様な形状にしていくと、よりそれらしくなる。
でMk.46のスクリューは二重反転なので、フィンと同様に鏡像を作って逆方向に回るプロペラを作ってやる。 Mk.46
さてここからがこのモデル最大の山場である。
Mk.46のスクリュープロペラは前後で枚数が違うのだ。
最悪なことに前後とも奇数の様で前列に至っては7枚、つまり角度指定しようにも割り切れない数字である。
とりあえず割り切って適当な桁で切り上げることにしよう。
Mk.46
まず「面の生成」コマンドでプロペラから辺を伸ばし、頂点を回転軸座標に合せる。
この時にオブジェクト管理窓で関係無いオブジェクトを選択してると、そちらに頂点が生成されてしまうので注意。
前後ともに頂点を生成したらどちらかのプロペラを選択し、「選択部処理」の「面を新規オブジェクトへ」コマンドで分離する。
あとはオブジェクトの複製と回転を枚数分繰り返していく。
Mk.46
するとこんな感じになるので、最初に回転軸と合せた頂点を頼りに位置を一つ一つ修正していく。
Mk.46
最後にオブジェクトを一つに纏めてスクリュープロペラは完成である。

魚雷のスクリューだからこの程度で済んでるが、これがターボファンエンジンのファンだと最悪もいいところ。
羽の枚数が倍数なら最小公倍数分を作ってから複製と回転を使えばいいが、倍数でない素数だとお手上げである。
もっともそんな捻くれた設計のエンジンがあるかどうかは定かではないが。
ファン違いで回転翼機のダクティッドファン、いわゆるフェネストロンも面倒なものである。
OH-1などは騒音を抑制する為に不等間隔、つまり角度が一定でないのだ。

さてスクリュー回転軸部分を先ほどの押し出し手法で追加していくのだが、ここで少々問題発生。
Mk.46
せっかく作ったプロペラの付根が軸から浮いてるのだ。
仕方ないので軸が浮いてる後列プロペラを新規オブジェクト化して分離。
Mk.46
付根の頂点を全て選択して縮小する。
ここで付根の前側の頂点だけを選択して、回転コマンドを使って更に調整しても良いだろう。
同様に羽の先端前縁を回転コマンドで調整すると、一々複製と回転からやり直すことなく微調整できる。
Mk.46
これでモデル形状は完成である。
Mk.46
あとは任意の位置をナイフでぶった切ったりしながら塗り分けるだけ。
なお色の変更は「選択部処理」の「面に現在の材質を指定」で材質管理窓にて選択したものに変更する。
その上で材質の設定から色を任意のものに変更する、という手順が必要となる。
Mk.46
メタセコでは材質ごとに色を管理するので、細かい塗り分けは面倒だが特定の色を一気に変えるのは簡単である。
Mk.46
と言うことをやって、最後に全てのオブジェクトを一つに纏めれば完成である。
この時に間違って一番最初に作ったサイズ補正用の立方体まで纏めないように注意しよう。
オブジェクト単位で纏めてしまうと、YSF用に変換してから分離するのは非常に面倒だからだ。
あと判り易い位置にフォルダを作って保存してかないと、後で色んなファイルが出てきた時に混乱するから気をつけよう。

これでメタセコ上での作業は終わり、次はYSFで読み込む為にsrfファイルへと変換する。
まず朝飯中隊駐機場さんのとこでMqo2Srfというスクリプトを落としてこよう。
Mqo2SrfはPerlスクリプトなので、それ用に動作環境を整えないと起動すらしなかったりエラーの元となるので注意すること。
当たり前だがスクリプトも動作環境整備も全て自己責任で行うこと。
当方もどうやって導入したか忘れてしまったので、聞かれてもモサリモサリとしか答えられない。

スクリプトを使わないでsrfに変換する方法も一応ある。
メタセコでdxf形式にした上でGepolyに読み込み、そこでsrf形式に再保存するという方法だ。
ただし色々と面倒な修正が必要らしいので、あまりお勧めはしない。

Mk.46
落としてきたzipを解凍するとこんなファイルが出てくるので、mqo2srf.plというファイルを実行する。
Mk.46
正常に起動すればこの様なウィンドウが出てくる。
Mk.46
Scaleには1と入力し、Output dir には判り易い位置のフォルダを指定する。
YSFでの1mはメタセコ上の内部単位1.0と同等なので、最初のサイズ補正時に間違っていなければ拡縮の必要は無いのだ。
もっとも、わざと大き目のサイズで作って縮小する方法もあるが、混乱の元なのであまりお勧めしない。
フォルダはできれば専用の作業フォルダでも作って、モデルデータと一緒に纏めておくと良いだろう。
あとは先ほど保存したmqoファイルをドラッグしてやれば、指定したフォルダに変換されたsrfファイルが作られる。
Mk.46
この通り、メタセコ上のオブジェクト単位でsrfファイルは作られる。
なのでメタセコ上で判り易いオブジェクト名にしておかないと、場合によっては混乱の元となるので注意しよう。
とりあえず必要なのはmk46.srfだけなので、これをコピーしてYSFLIGHTのインストールフォルダへ移動する。
Mk.46
今回は魚雷なので500ポンド爆弾に割り当てることに。
上書きしたらYSFを起動して実際にどの様に表示されるか確認する。

ちなみにYSF以外にもsrfファイルを表示して確認出来るソフトは幾つかある。
ただしYSFと同じ様に表示されるとは限らないし、機体とのインテグレートにはどのみちYSFが必要となる。

Mk.46
意図した通りの形状と色で表示されていれば問題ない。
Mk.46
この手の兵装は小さくて確認が面倒なので、一時停止した上でF10視点を使って接近してみると良いだろう。
なお形状や色に問題が無くても搭載位置がずれている場合もある。
そういう場合はメタセコ上で本体の位置を調整する必要がある。
もっとも基本的に本体の中心を原点座標と合せていれば問題は無いが。

Mk.46
以上で本チュートリアルは終わりである。
この通り、YSFの兵装モデルはメタセコとperlスクリプト一つで容易かつ正確に作成できる。
機体の制作は更に必要とされるものがあるが、兵装モデル程度であればそれほど難しくない筈だ。
こうしたモデル作りを難しいと避けていた諸氏も、この機に是非ともYSFの創作活動に踏み出して欲しい。

   ハ,_,ハ     ハ,_,ハ 
 ,:' ´∀`';,:' ´∀`'; 本音はと言えば「欲しいと思った人が作って欲しい」モサリモサリ
 :: っ ,っ :: っ ,っ  リクエストは自分の都合と合わないと中々受ける気になれないモサリモサリね
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